OUTSIDER対戦相手、ルールについて
出てきた対戦相手を見たら正直困った。
恐らく(僕も含めてだが)決勝に進んだら絶対に優勝するという期待に満ちていた表情をしていた。どいつもこいつもいい面構えしてやがる。
正直そう思った。何故かターゲットのはずの瓜田さんまで自信満々に見えてくるから不思議だ。
普通決勝が一番難易度の高いものとあらゆる競技でも決まっているのだが、決勝がボーナスステージというのも珍しいだろう。しかも10万円がもらえる訳だ。
これまで格闘技の試合は何回か出たことがあるがお金を貰えたことはない。それも僕にとって魅力的だった。
まず気になったのはルールだった。
送られてきた書類を見ると試合のルールはほぼアマチュアのキックボクシングのルールと同じだった。首相撲、肘なし、回転技あり。バックハンドブローあり。3分×2R。
グローブ12オンスは普段スパーの練習の時16オンスでしていたからちょっと小さいかなというレベルであまりそこは気にしなかった。
ただ
ヘッドギアなしで脛当てもない試合に出るのは初めてだった。
格闘技をしていない人からしたらそんな違うもの?と思うかもしれないけどあるのとないのではやはり精神的なものがだいぶ違う。
近年アマチュアのボクシングではヘッドギアがなくなるなど、ヘッドギアはあまり脳のダメージに対して効果的ではないなどと言われているが、実際に試合をする側としては気になるところだ。
ボクサーたちが「ヘッドギア」を着けなくなった理由|WIRED.jp
また脛当て(格闘技の試合で布団みたいなのを足に巻いている)がないのも気になった。昔フルコン空手を少し齧ったことがあるが、脛当てがない状態でのローキックはかなり痛かったのを覚えている。
現在(後ほど書くがクビになった)キックボクシングのジムに通っているが練習の時はほとんどレガースを付けていた。昔格闘技にハマっていたころ、電柱や硬いものを脛で蹴って硬くするなどして練習していたが仕事終わり久しぶりに電柱を蹴ってみたところ、脛に電流が走る衝撃が感じた。どうやら仕事や何かあればすぐに酒を飲む、生ぬるい環境にいたせいでいつの間にか僕自身だけでなく脛も柔らかくなったようだ。
そして次に気になったのは対戦相手だ。
正直全員強いのか弱いのか全く分からなかった。戦績を見てもアウトサイダーは総合メインだからか総合の戦績を書かれているが勝ち越している、期待のhopeというわけでもないらしい。僕の最初の対戦相手はガッツポーズまでしていた。
(ガッツポーズ参照画像)
見た目も海とかクラブで騒いでるようなタイプだろう。身長はほぼ同じだったが、やや細いかな。そう思った力でごり押しすれば何とかなるかもそんな淡い期待を抱いた。
またトーナメント形式だから出来るだけケガを少なくして勝ち上がりたいから、蹴りは使いたくないからパンチ勝負になるかな。そう思っていた。
パンチに関しては割と上手いほうだったのでそこは心配していなかった。
ところがもう一人2試合目予定の相手がTwitterをしていたので、どれどれと覗いたところ
パイナップルを素手でつぶしている動画を上げていた
正直ビビった。しかもパイナップルジュースを作ろうとしているのに下においてあるコップが小さくて全くパイナップルの汁がかかっていなかった。
そのおっさんはどうやら今回の件でわざわざ京都から仕事を休んでくるらしい。
昔高校の時ハリーポッターが欲しくて朝から徹夜して並んで買っていた同級生の高見君を何でか思い出した。
転売ヤーや早売りの整理券に群がる中国人みたいなメンタルしてるなと思い、後当たり前だが墨の入りまくりのこの輩みたいなおっさんにびびった。
1戦目勝つかどうか分からないが、勝ったらこのパイナップルおっさんと殴り合いになる可能性が高い。
何となく搾り取られていくパイナップルを僕の頭に見立ててぐちゃあとなったりするんじゃないかと怯えていた。
うーん。これは困ったな。そう思っていた時、キックのジムに選手兼トレーナーの若い兄ちゃんがいたからアウトサイダーの件とパイナップルのおっさんの話をした。
地下という言葉に抵抗はあったみたいだが、知り合いにも出た人がいるけど実力は分からないですねえと言っていた。後組技は強い人は強いらしいっすよとアドバイスをくれた。「それで○○さん何をそんなビビってるんですか。」と聞いたので正直に答えた。
レガースがないこと、ヘッドギアがないことグローブは12オンスなこと。パイナップル潰しているおっさんがいたこと。それを離すと若いトレーナーは笑い始めた。
「レガースなしとかまあ余裕っしょwしかもグローブ12オンスとかちょっとガチめのスパーリングみたいなものじゃないっすかwwそれにいくら入れ墨入れててもキックとは関係ないですよwwwパイナップルつぶす必要も試合中ないじゃないですかw」
見た目はチャラチャラしていて会員の女の子に手を出しているが、やはり現役の気合の入ってる選手はいうことが違う。
確かになあ。そう思っていたらボクシングクラスのトレーナーがいて軽く相談してみた。そのトレーナーもアウトサイダーのセコンドについたことはあったので比較的好意的だった。
「○○(僕の本名)何をそんなにビビってるの?」
トレーナーは単刀直入に言う。とにかく僕は性格の問題もあるが、格闘技とかしていたが何かと不安症だった。
「いやまあ色々と怖いじゃないですか。ルールもそうですし相手も強いかもわからないですしかっこ悪い負け方したら糞ダサいし」
そう言うとトレーナーは少し考えるような顔をしていた。長年トレーナーをしていて似たような悩みは腐るほど聞いてきたんだろ。ちらっと僕を見る。
「○○(僕の本名)でもさあ例え試合に負けてもビビッている
今の自分には勝つことが出来るよ。
それだけでも良いんじゃない?勝つか負けるかは置いといてさあ」
自分に勝つ。
漫画やドラマでよく聞く平凡なセリフだが、いざ悩んでいるさなかに言われるとグッとくるものがあった。確かに。これまでの人生逃げっぱなしというわけではなかったが、大事なところで失敗したりしてきた。
今回瓜田チャレンジに応募することで何か変わるかもしれない。とりあえず脛に軽くビール瓶をたたいてぷにぷにしていた脛を鍛え直すことにした。
すると二戦目のパイナップルおっさんの相手(明らかに身長が低く不利そうだった)
僕と同じくパイナップルの動画を見てビビったのだろうか、写真がいつの間にか消されていて、これまた立派な墨の入った選手が新しく入っていた。
バックボーンはキックボクシングでアウトサイダー15戦くらい出て勝ち越しているいかにも強そうな相手だ。
また出るのを辞めようかな。ビール瓶でこつこつ脛を叩きながら僕はそう思った。